我々ビアセラーサッポロがこれから新しいポートランドの仲間との取引を開始していく中で、意識を少し変化させて臨もうと思っています。
もちろん決め手の前提として魅力的なビールであったからなのは言わずもがなですが、昨今のポートランド事情を危惧していたことにも起因します。
コロナ禍以前よりポートランドは資金力を持ったところでなければ、新たな場所で何かを始めることが許されないような土地になってしまっていました。
現地の方々が「ポートランドがどこにでもある街になっていく」と嘆いていたのを思い出します。
ポートランドがポートランドたりえるのは、変わり者が変わり者として居続けることができる素晴らしさです。当然ながら陰と陽二つの面がありますが、それでも魅力的な土地でした。
ポートランドのローカルを煮詰めたような面白い場所がたくさんあり、またその歴史も他の都市には真似できないところまで到達していたように感じます。
その街の素晴らしさが遂に表立って取沙汰されるようになってから、人も車も増え続け物価は上昇の一途を辿っていたのです。
そうした中で弊社の取り扱い先の醸造所もかなりの数が閉業しました。すでに開始当初から取り扱いのあるところは片手に収まる程度。
ショッキングなことにオレゴン州最古のブルワリーであったブリッジポートの閉店も起こりました。
我々の中でポートランドはそうした文化を絶やさない土地であり続けるものだと思っていました。変わりゆく中でそれに流されることは決してないと。
ただその波があまりにも激しくなっていたことに我々は気付き、ポートランドと姉妹都市であるここ札幌で彼らの情熱の結晶クラフトビールとハードサイダーを販売させてもらっている身として、手助けできることはないかと常々考えるようになりました。
そしてこのコロナ禍はポートランドのみならず世界中を蝕み、その問題をより難しくさせてしまいました。
ですが我々の仲間であるポートランドのブルワー達は、日本に向けて素晴らしいビールを造ってくれています。
それはポートランドで消費されるビールと一緒に造るついでなどでは決してありません。オリジナルビールをたくさん日本に向けて造ってくれていることからも見て取れると思います。
仲間たちからの紹介で繋がった新しい取引先。
彼らの持つコンセプトと歴史は、気付けず何もできずに手から滑り落ちていってしまった過去の取引先を内包したものでもあると言えます。
これからもポートランドとの関係を大事にしていくために、彼らと手を結んで、今取引している先すべてとの繋がりをより強固なものにしていこうと思いました。
それが今後いくつかご紹介することが叶いそうな新しい取引先との合意に至った経緯です。
好きなポートランドのためだけじゃありません。
彼らはそれでも曲げない信念を大事にモノづくりをしています。閉業することのほうがマシだった。
その思いが持ってきている札幌にも流れ込み、そしてそれがまたポートランドにも返っていく。そうした相互間での作用を持って我々の行うインポートは成り立ちます。
美味しいクラフトビールを持ってくることだけが第一義にあってはならない、そう意識をかえて大事に持ってきて大切に販売をしていこうと思います。